運転について   (ヴィデオ・メニューは文の下にあります)

10時前に1台も停まって駐車場に車を入れ、未だ誰も来ていなかったらと、心配しながらア駅舎に行くと、ミュージアム・ショップ側の正面は閉まっていたが、プラットフォーム側に回るとドアの鍵はかかっていなかった。
中に入ると、ヴォランティアーらしき 2,3人がおり、未だ観光客が来る時間ではないので正面は開けていなかったとの事。
我々の到着を告げ、ミュージアム・ショップのカウンターで待つと、未だ 20 前と思われる男性が来た。 まさか、だが彼が試験官。

書類に書き込み、運転規則本等を貰い、一旦モテルに戻って勉強。 本は新しくなり、内容も変わっていた。
前夜、4年前の本をラップトップに入れてあったものを読んでいたので、一目で違っていると思われる箇所を捜し、頭に叩き込む。
特に、前回は手信号等の問題は出ないと思っていたのに、2題程出ており、両方共間違ってしまったので、手信号、汽笛信号は自分なりに図を描いて何回も確認。

12時前に駅舎に戻り、さてテスト。 答案集も呉れるのだが、チラッと見た感じでは前回の様に出題の答案がそのまま出ているようには思えない。
代表的な答案を纏めたものなのだろう。 要らない、からとベンチに置き、正面の小さな机で始める。
矢張り、信号関係は出ていたが、前回の様な、構造に関する問題は無かった。

15分もして、もう書き様が無く、カウンターに戻った。 若い子が短い質問をしながら採点をしていく。
「どの位合っているかな」と聞くと、 「規則で点数は言えないけど、かなりいいョ。 普通よりずっと上 」 と、言ってくれた。 自分でも8割近は正当と思ってはいたが。
彼と話をしていると、自分も運転をしたいんだ、と言う。
この仕事でお金を貯めて運転をするんだ、と。 将来は此処で働いても、と言った。 未だ高校生のようだ。働いていても特別扱いはしないらしい。
規則によると、100時間程の運行関連の仕事を終わらせれば、検定後に運転士になれるようだが。

機関車は前回と同じ ”93”。 頭はこちら向きだ。 懐かしい、しかし、 "40" を運転してみたかった、というのが本音だった。
地上で助士と打合せをしている機関士を遠くから見ていると、私よりは少々年上だろうか、アヴィエーション・サングラスと共に、気難しい人に思えた。
やがて機関士は運転室に乗り込み、暫くして、駅にいた男が 「もう乗ってもいいよ」 と言いに来た。
乗務員との紹介が終わり、乗り込む。 運転室は高いので、まず妻を引っ張り揚げて貰い、続けて自分も。
中は矢張り広い。ボイラーが中に入り込んでいる、と云うより、運転室が前方に張り出ているのだが。 ボイラーの横は人が前後に二人立てる程の空間となっている。
何となく前回とは雰囲気が違う。 4年も経っているから手が入っていない方がおかしいが。

「駅構内は私が運転するから、よく見ていてくれ。交代場所で言うから」、で助士に頷くと、助士君は鐘の紐を引く。カランコロンと鐘が鳴り始めた。
機関士は逆転機のレヴァーを手前 2/3 程引き、窓を背に腰を軽く下ろし、上から下がっているレヴァーを4回位引く。 汽笛が長さを変え響き渡る。
横向きに座っていた腰を上げ、ブレーキ弁を緩めると腰から上を窓から出した体勢で加減弁を引く。スッと動いたが、その後が重そうだ。
様子が前とは違うと見えた。 グッ引き、戻す、それを3回程繰り返す間に機関車はゆっくりと動き始めた。
空転させない為の小刻みな蒸気送りと見えた。

暫く走り、留置線横の中程で、一時停止、助士が機関士側から下に降りた。 ポイントの切替の為だ。
昔は、本線上ならば3人乗務。機関士、助士、ポイント切替や連結器操作等を行う係りだ。
助士の合図と共に、動き出したが、直ぐに停車。 まだポイントは通過していない筈だ。 助士が無線機に話しかけながら下迄やって来た。
なんだかよく判らない。 機関士は助士から説明を聞いた後、我々にも教えてくれた。
高温のせいで、ポイント・レールか操作棒が伸び、車輪が挟まれた状態になったようだ。
ともかく数メーター前進し、現場をクリア、指令所からの連絡を待つ。 無駄話をしながら数分が経った。
このまま運行中止になったらどうなるのかと気にし始めた頃、無線機が鳴り、トラックを送るとの事。

待つ事暫し、トラックがやって来た。 ごつい体つきの男が何人か降りて来て、助士と何やら話すと直ぐに後ろに消えた。
やがて掛け声が聞こえ始め続いた。 助士君も加わっているようで、機関士は渡り板に立って後を窺っている。
暫くし、助士が戻ってきて話しかけると機関士は席に戻り、先程の姿勢をとり、ブレーキを緩め、加減弁を小刻みに引き始めた。
助士と声を掛け合いながらゆっくりと後進。 ポイントとトラックを通り過ぎ停止。
トラックの連中は下をじっと見つめていた。 ホッホッと短声2笛。 前進を始め、ポイントを通過して、又、停車。
無事に通過できた。 トラックが横を走り去って行く。 助士君を拾うと、ゆっくりと前進を開始。
それにしても気温でポイントが動作不良となるとは。 30分以上時間が経っていた。 こちらは、一向に構わないが・・・

水タンクを横に見てから全てを停車状態にする。 この先暫く行くと勾配になってしまうからだ。
  機関士はこちらを向くと手招きをし、立ち上がると私を座らせ、横に立った。
「前にも運転しているらしいから、今迄見ていて判っているかもしれないが、説明をするよ」
先ずは計器の説明から。
「左がボイラー圧力計・・・ その右がブレーキの圧力計・・・ その横が速度計。 ここでの最高速度は18マイル(約29km)。
汽笛のレヴァーは観ていた通り。 鳴らす状況は覚えているかな・・・・
前進後退レヴァーを握り、歯車を外し、中央から前に倒すと前進、後が後退。 手を放した位置で止まる。
スロットルは遊びが長いから、レヴァーを握ったら、遊びの終わり迄引き、両手でゆっくりと引けば機関車は動き出す。 その前にブレーキを緩める。」
実際にレヴァーを私の肩越しにグググッと小刻みに引いたり、戻したり実演。
逆転機は中立だから機関車は動かないが、シュッと蒸気が漏れる。

「次はブレーキ。 左が緩め、右に回すとブレーキがかかり、緊急時は右端迄回すと、非常ブレーキとなる。」
ブレーキに関してはハンドル操作を繰り返しながら2度程説明する。 最も大事な操作だ。
こちらも記憶を辿りながら反唱。はっきりしない事は聞きなおす。

釣り合いブレーキの事が出なかったので聞いてみた。
「質問があるのですが。 前回、坂を下る時に一度ブレーキをかけた後、ノッチ乗り越し寸前迄ハンドルを戻し、圧力計を見ながらかけていくと、
何ポンドかで速度と釣り合う、と言われ、やった事があるんですが・・・・」と、自分の疑問を投げかけた。
「それは聞いた事がないが。 これは、かけた分だけかかる様になっている」
「難しかったけれども2度程うまくバランスした記憶があるけれども」
「そんな事はないと思う」 それで取り敢えずお終い。

「始めようか。 汽笛を鳴らして」 汽笛のレヴァーを2回短く引くが、引きが足りないのか寡細いかすれた音が2声。
繰り返すわけにはいかないので取り敢えずこれで諦める。
肩の辺り迄引かないと駄目なようだ。 これはやり難い。

「ドレイン弁を開けて」
「何処ですか?」
「足許」 しゃがんで手を伸ばし、弁の操作。
「逆転機レヴァーを前に倒して。 ああ、その辺でいい」 約 1/3 行程位か。

スロットルを引いてみる。 2010年の時とは感覚が違う。
歯が随分こちら側で始まっている。 だから最初はスーッと動いたのだ。 以前は少しの遊びの後、すぐに歯が始まっていた。
それ以上に引っ張るが、入らない。 スプリングが極端に強い。 レヴァーを握り直し、歯を外し、今度は左手を添え、慎重に引いてみる。
最初の歯は通り越したようだが、握って引く事に集中していて、停めたい位置で握りを緩める事が旨くいかない。
握りを緩めると歯が懸かって、その位置で固定されるのだが、引く力も緩んでしまうので、一瞬の遅れで引っ張られて遊び位置にスッと戻ってしまう。

腰を浮かし、グイグイと力を込めると微かに動き出した。 運転士は横で笑っている。 前回とは全く勝手が違う。
2010年の時は、スムースに動き過ぎ、力が入ってしまい過ぎ、一挙に 1/3 程動いてしまい、大空転。
「戻せー」 と同時に、レヴァーを横から押し戻され、やりなおし。
考えてみるに、加減弁の操作が軽いと、素人は一挙に引きすぎ、私の様に空転を起こした人が多く、定期検査の際に構造を変えたのではないか。

速度が上がらないので、長ーい長ーいシューが聞こえて来た。 間が抜けて聞こえる。 2,3回蒸気を出すと、
「ドレインはもう閉めていいよ。 もう少し速度を出してみたら」
  レヴァーがスリップ・バックするのに対抗し、全身に力を入れてグッと引っ張る。
1/4 程引けたのか、徐々に速度が上がり始めた。
ひいたままで握りを外せば、レヴァーはその位置で歯に懸かり一定量の蒸気がシリンダーに送られる。

やっと気を落ち着けて前方を見る事が出来た。 これで又、30分以上経ってしまったようだ。
この調子だと前回同様、帰りは運転交代か、と考えてしまった。
いよいよ本格的な運転開始。 加減弁を思いっきり、しかし確実に引き、1/3 辺りで握りを緩める。
速度が上がってきた。 手はレヴァーにかけたまま。
「ロックされているから、手を離してもいいんだよ」 と言われても、そうはいかない。

突然、鐘が鳴り出した、助士君が紐を引いている。 踏み切りだ。 左カーヴで良く見えない。
ホー、ホッ、ホッ、ホーッ、で 4 気目が終わる時には先端が踏み切りの前に居なければならない。
レヴァーの引きが足りないのか未だかすれた音しか出ない。
距離と速度の関係が上手く掴めていない。 鳴らし始めが早過ぎた。
4 気目は思い切り引き、蒸気を無駄に使うのは申し訳ないが、引きっ放しにする。 やっと大きな音が出た。
音の事もあり、流石に踏切のギリギリ迄鳴らし続けるのは止めた。

加減弁の位置が合っているのか、ダラダラちした登りが続いているにも関わらず速度計は15辺りでフラフラしている。
手を加減弁から離しても構わないのだが、そのまま乗せておく。
余裕が出て、前後左右の監視、助士君の給炭作業も目に入るようになった。
前方注視は8割、残りはゲージと加減弁、ブレーキ弁の確認。
正面窓が大きいので窓から顔を出しても景色はそんなに変わる訳でもないが、時々、体を乗り出して、煙突とか後方を見る。

速度が徐々に落ちだした。 勾配が変わってきたのだ。
「逆転機を少し前に。 スロットルを上げて」
レヴァーを握ると、スプリングに負けて、レヴァーが前に滑ってしまう。 速度はもっと落ちる。
引いても引ききれない。 立ち上がり全身で引く。 どこ迄引いて良いかは判らない。
この辺と思っても結局は、元と同じ位置だったようだ。
速度は落ちたまま。 再度、引っ張り上げ、少しづつ速度は回復してきた。
そのまま乗り切る。 勾配が緩くなり、速度計は18に。
「逆転機を少し戻していいよ」
ドラフト音間隔が短くなり、心地良いリズムとなった。 加減弁も少し戻す。

あれから3つ程踏切があったが、助士君よりも早く気づき、汽笛の方が先になる事もあった。
段々調子が上がってくる。 汽笛の音もかなり良くなったが、相変わらずタイミングは難しい。
速度の調整にしても、汽笛を鳴らすにしても、線区をよく知っていれば、合わせる事はできると思えた。 それには何回運転しなければならないか。

「この辺でブレーキを使い、速度を落とした方がいい」
前回使った釣り合いブレーキを試したく、ブレーキ圧力計を見ながらブレーキ・ハンドルを右に回し、少し戻す。
しかし、圧力計の針はその分減るだけ。 2,3回試してみたが同じ。
前と感覚がまるで違う。 諦めて速度を落とす分だけハンドルを回した。
そのまま運転は続く。 横を走っている郡道を車がスイスイ抜いていく。

待機線のポイントが見えて来た。
「あそこで停めてみよう」
前に変なかけ方をしたので、ブレーキの使い方を確認したいのだろう。
加減弁を閉じ、ブレーキ弁に手をかける。
ノッチを超えて15°程右に回す。 間を置いてブレーキが効き始める。
ハンドルスッと戻し、緩める。 かける。 緩める。
目標の手前だったが、ほぼ狙った所で停車。 悪くは無い。 位置を確認していると、
「いい具合だ・・・・ブレーキをかけて!」 
そうだ停止しているので、ブレーキは緩めの位置のままだった。
平地だからわからなかったけれど。 ほんの少しバックしかかったようだ。

(ここ迄、2016年8月執筆   現時点では、続きを書くかどうか決めていません)


蒸気機関車運転 ヴィデオ・メニュー 2016年6月27日

妻の撮影で、始めて触るファインダー・レス・カメラ。 全てオートにセットしっぱなしなので、ご容赦を。

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             駅構内の転線      運転教習 6分6秒

 旧鉱山の手前の三角線迄殆どが登り     帰りは、ブレーキ操作が肝要となる。